もう、僕は気の落ち着く暇がない。

「吉良」
「……なに」
「お前は何故ロリコンなのだ」
「は!?」

何故って。
女が嫌いだから。きれいだから。可愛いから。
僕がそう返すとルキアちゃんはきょとんとする。

「何故女が嫌いなのだ」
「何故って……ていうか、そんなこと聞いてどうするんだい」
「暇だから聞いただけだ」
「暇って……」

じゃあどこかで働けばいいだろ。それこそ風俗とかさ。一石二鳥じゃないか。
でも彼女は、

「セックスの回数が少ない男の方が美味いのだ。あと、女のにおいが付いているから嫌いだ」
「女のにおい?」
「形容し難いがな……まあ以上の点により、お前みたいなやつのほうが好条件なのだ」

にやりと彼女が笑う。つまり、童貞が一番美味いと。あー、ほんと腹立つ。間違っちゃいないけどさ。

「お前としても性欲を持て余さずに済むのだから良いではないか」
「人を性欲異常みたいに言わないでくれるかな…?」
「十分異常だろう。ネットで知り合った中学生に手を出して……まんまと騙されたな。え?」

中学生。その一言に惹かれたのは確かに僕だ。だってまさかこんな子か混じっているなんて思わないじゃないか!
同居を始めて今のところ、食費はかかっていない。光熱費がちょっと増えただけ。彼女のご飯は、僕の……精液だから。

「ほら。また顔が赤いぞ」
「ぁかくなんかないよ」
「声が裏返っておるぞ」
「裏返ってないよ」

こうやってルキアちゃんは僕を馬鹿にする。……腹が立つのに、何だか楽しいのがますますムカつく。

「君さ、なんでそんなに中身と外見が違うんだよ。ハズレ引いた気分だよ」
「そうですか? 私もハズレを引いた気分です。まさか吉良さんがあんな変態さんだったなんて」
「ごめんそれはもう止めて」

あのまま彼女が大人しい普通の中学生だったら良かったんだ。そうすればこんなことには……。
そして僕は変態なんかじゃない。初めてのことだったから戸惑っただけだ。次こそは、僕が。

「ああ、そうだ」
「?」
「食事にしよう」
「え」

こいこい、とルキアちゃんが僕をベッドに呼ぶ。ほら、早速チャンス到来だ。次こそ僕が主導になってやる。
ベッドに座った僕の上に、ルキアちゃんが向かい合わせに座る。香る、かすかな甘い匂い……反則だ。

「お前はこれしか素直になるものがないな」
「…せっかくの人の好意を無にする気?」
「はいはい……いただきます」

僕が女の子に触る以上に、ルキアちゃんは僕に優しくする。キスなんかもすごく、上手。

「……あのさ」
「何だ。無粋な奴め」
「僕は、動いた方がいいの。それとも」
「お前はそのままでいい。私が全部してやるから」

全部、の言い方が妙な色気を含んでいた。
まあ、僕ができることなんか数少ないけどさ。でも僕だって男だし、普通主導するべきじゃない?
そんなことを考えながら、とろけそうなキスをたくさんされて、僕はあっという間に息切れる。

「──お前は、ほんと初な奴だな」
「なんで…ッ!」

ルキアちゃんの手が僕の下半身に伸びる。ゆっくりとジッパーを開けて、下着の中に指を突っ込まれる。

「え、あっ」
「今日はどうしようかなあ。また口でしようか」
「ま、待っ」

人差し指が鈴口を弄る。僕はすごく熱いのに彼女の指は冷たくて。妙な感じに、ぞくぞくして。僕は情けないことに彼女にしがみついた。

「もう固くなってきたな」
「っいわないで」
「昨日もしたというのにお前という奴は……」
「君がさわるからっ…」
「私が触らずとも勃起しているくせに。夜中、寝ている人の体に熱い下半身を当ててきた人間は誰だったかなあ」

っ……バレてる。なんで分かったんだろう。
人差し指から親指に変えて、彼女は執拗に僕をいたぶる。爪が触れる度、ぐちゅっと嫌な音がする。わずかに彼女の肩が揺れた。

「…ああ、もうこんなにぐちゃぐちゃだ」
「だ、れのせいでっ」
「お前、いい犬になれるぞ」
「犬ってなんだよっ…!」

ふと、彼女の指が僕から離れる。あともう少しだったのに……。
ルキアちゃんは、スカートの中に手を突っ込んで下着を脱ぐ。折れそうな足を見ていると、すごくムラムラする。

「これから私がいいと言うまで、いくなよ」
「えっ!?」
「ほらっ」

またあの圧迫感。僕は一気に心臓が跳ね上がった。声は唇を噛んで我慢したけれど、また彼女にしがみついてしまった。
抗議しようと思わず顔をあげると、汚いものを見るような瞳に出くわす。
その瞳があまりにきれいで、僕は。

「あっ、ぁ」
「まだだぞ」
「無理、も…」
「駄目だ」

揺れる小さな体にしがみつきながら、また僕は情けなく喘ぐ。だって気持ちいいんだもん。
……正直、さっきの「犬」発言だって興奮した。今だって、

「んぅ…ん、んっ」
「そうだそうだ。がんばれ」
「っぅ…んはぁっ…あぁっ…!」

髪を梳く優しい手を感じながら、僕はひたすら放出に耐える。
もうさ、おかしいよね。なんで僕が我慢してるんだよ。普通なら僕がルキアちゃんに我慢するように言うべきじゃない?

「──何だ、考え事か? 随分、余裕、だなっ」
「っひ…!」

ぎゅっと強く締め付けられて、僕は一気にルキアちゃんの中に白濁を放った。…気持ち良すぎて、足が痺れてる。

「はぁっ…あぁ…っ」
「私がいいと言うまでいくなと言ったはずだが?」
「それは、」
「考え事などしているからだ、莫迦が」

ルキアちゃんは吐き捨てるように言った。そしてまた、あの見下した瞳。

「……お前、本当に犬だな」
「へ…?」
「何もせんうちからまたおっ立ておって……盛りのついた畜生か、お前は」

呆れたような、でもどこか満足そうな声でルキアちゃんが言う。
その声に、背筋がゾクゾクして。

「……うん」
「?」
「僕は、君の犬」

さっきの瞳で見下されて、その呆れた声で罵られたい。
もう、中学生だとかそうじゃないとかどうでもいいや。こうやって彼女とできるならそれでいい。
思わず顔を肩に埋めると、そっと頭を撫でてもらった。

「漸く傅いたな。ロリコン」
「その呼び方やめてよ……」

小さくぼやくとくつくつとルキアちゃんが笑った。