冬月に咲く




それは凍えるほどに寒い夜のことだった。
いつも通り駅から自宅に向かう吉良は、ある人物を見かける。
すらりと背の高い男性。夜の闇に解けこむ髪色と雪のように白い肌が目立つ。男だけど綺麗な人だ。
彼だけなら何の問題もない。そう、彼だけなら。
問題は、その男性が出てきた場所だった。
男性はさっと車に乗り込んで、吉良と反対方向に走り去る。思わずその場所に駆け寄る。
そこは民家だ。どこにでもある、普通の家である。しかし吉良にとっては特別な家だ。
そこのドアが閉まりかけている。吉良は人目も気にせずドアに向かった。ひやりと冷たい、シルバーの取っ手。けれど漏れ出る空気は暖かい。
少し重いドアを引っ張って、隙間に爪先を差し込む。じゃり、と塵芥が吉良の存在を家人に知らしめた。

「――――誰?」

……初めて耳にした声は、可愛らしくて。
吉良はふっと溜め息を吐いた。オレンジ色の玄関照明の下、小柄な女性が呆然と彼を見ていた。
濡れるような黒髪。透き通る白い肌。小さな桃色の唇。夢にまで見た「彼女」がそこにいる。彼女の、思ったよりも小さい背丈に吉良は微笑む。
…そうだ、名前を言わなくちゃ。そう考えたのは僅かな理性で、口を吐いて出た言葉は感情剥き出しのそれだった。

「今の人、誰?」

ぎゅっと彼女が拳を握る。警戒しているのだろう、無理もない。緊張を解くように、努めて明るい声で吉良は再び問う。

「今の男の人、誰かな」
「…あなたに関係があるんですか」
「あるよ」

高鳴る胸とは反対に言葉は冷静だ。慌てた態度だと彼女に不快感をもたらすかもしれない。
彼女は吉良と距離を保ったまま、静かに答える。

「さっきの人は私の彼氏です」

はっ。乾いた笑いが洩れた。少し驚いたけれど、まだ落ち着いている。

「いつから付き合ってるの?」
「どちら様ですか」
「どこまでしたの?」
「さっさと出て行って下さい。警察呼びますよ」
「実害がない限り、警察は介入しないよ。夫婦喧嘩は犬も食わないって言うしさ」

にっこり笑って言うと、小さな舌打ちが聞こえた。イラついているみたいだ。

「人にものを訪ねる前に自分の名前くらい言ったらどうか。」
「あー、そうだね。ごめんね。やっと君に会えたから舞い上がっちゃった」

会えた、のところで彼女が眉を顰めた。

「私はお前のことなどこれっぽっちも知らんぞ」
「だろうね。ずっと僕の片想いだもん。名前も知らなくて当然だ」

吉良は自分の携帯電話を取り出す。

「これ、君のと機種同じだよね?」
「…は?」
「これ一杯データ入って便利だよね。画質も綺麗だし、買い物上手だね、君」
「で?」
「さっきの人、彼氏なんかじゃないでしょ? お兄さんだよね?」

吉良が彼を見かけたのは、実は二度目だ。
初めて見かけたのは夏の蒸し暑い夜。ここから少し離れた大きな公園で花火大会が催された日、彼女が先ほどの男性と親しげに歩いていたのだ。
彼女は男性を彼氏と言ったが、それにしては手も繋いでおらず、どこか距離感があった。それは家族としての「距離」だ。
表情豊かな彼女のことだから、大好きな彼氏ならもっとはしゃぐに違いない。

「どうでもいいことだ。お前には何も関係ないだろう」
「あるよ。彼氏なら排除しなくちゃいけないし、お兄さんならちゃんと挨拶をして君を貰わなくちゃいけないから」
「お前、いい加減に…っ」
「僕がいるんだから浮気なんかしちゃ駄目だよ」

吉良は携帯電話を操作する。

「ほら見て。君の写真が一杯入ってる。僕、君のことなら何でも知ってるよ。誕生日も血液型も趣味も学校も好きな食べ物も嫌いなものも全部知ってる」

ばっと突き付けられた液晶画面に彼女がたじろいだ。小さな画面には何枚もの画像が表示されている。
そのどれもこれもが「彼女」だ。駅で読書をしている姿、電話をしている姿、友達とクレープを食べている姿……。
気持ち悪い。青ざめたを通り越して、蝋のように真っ白になった彼女の顔にはそう書かれていた。
その刹那、携帯電話がくるりと反転してシャッター音が鳴った。
…怯える顔も可愛いね。
小さな呟きを聞いて、彼女はバッと玄関を上がろうとした。しかしその腕を吉良はさっと掴まえる。あまりの細さに息を飲む。

「どこに行くの? まだ話してる途中だよ」

彼女はゆっくりと振り返る。恐怖の表情。携帯電話をしまった吉良はそっと彼女の頬に触れる。冷えた指先は柔らかく、温かな頬に沈み込む。

「浮気するってことは、僕の愛情が足りないってことだよね。だからあんな奴に走るんだよね。お兄さんだなんて嘘を吐いて庇うんだよね」
「違…っあの人は、」
「あんまり束縛すると可哀想かなって思ってたんだけど、こんなふうに浮気しちゃうなんて……ずっと僕が傍にいてあげるから、もう他の男に走っちゃ駄目だよ?」

するりと指を滑らせて、顔をこちらに向かせる。真正面から見る、大きな瞳。そこに映るのは僕だけ。揺るぎない事実に吉良は満足そうに笑う。

「じゃ、僕の家に行こうか」
「っ!?」
「ここにいたらあの男が帰ってきちゃうでしょ。もう誰にも触らせないんだから、君を」

ねっ? 吉良がそう微笑むと彼女が気まずそうに目を逸らす。
……やった。
俯く彼女の手を引きながら、吉良は自宅に向かう。彼女の家からそう遠くない場所に彼の家がある。
あの男、お金持ちなの? 社会人だよね?
今は僕マンション借りてるけどさ、いつか一緒に住もうね。一軒家がいいなあ。
制服のままだけど、部活から帰ったばっかりだったの? お腹空いてない?
ミルクティー好きだよね。君の好きなブランドのやつ買ってあるんだ。
歩みを揃える二人はぱっと見たところ、恋人同士のように見える。しかし話しているのは吉良一人で、彼女は相槌を打つこともしない。
いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。冷え切った空気が二人の関係を示すようだ。
それは吉良の家に着いても変わらず、彼女は少しずつ追い詰められてゆく。

「寒いよね。今暖房入れるから」

狭い玄関に靴を脱ぎ、中に連れ込まれる。ぱっと電気を点けた途端、彼女は息を飲んだ。
一人暮らしには最適だろう、ワンルームマンション。その壁という壁に写真が飾られていた。被写体は、全て彼女。
思わず歩みを止めると、吉良が振り返る。

「どうしたの」
「…気持ちわるい」
「どうして?」
「こんなの、おかしい」
「おかしくなんかないよ。好きだから飾ってるだけだよ。当然じゃないか。僕と君は付き合ってるんだから」

砂糖が溶けた、甘い声。けれど心に芽生えた恐怖は消えない。
吉良はじっと彼女を見つめ、ベッドを指差す。
……座ってと言っても、まだ手を繋いだままである。吉良は彼女をベッドに誘導し、一緒に腰を下ろす。
微かに身を震わせる彼女を吉良は抱きしめる。
――その体は思ったよりも細かった。胸も少し薄くて、まだ発展途上の身体なのだということを認識させる。
…寒いね。でも君といると温かい。それが愛し合う恋人同士の台詞ならば、どれほど甘くて、心を解かすことだろう。

「ルキアちゃん」

呼ばれた名前は間違いなく自分のもの。彼女――ルキアは戦慄する。
この男はどこまで私のことを知っているのだろう。そんな疑問がさっきから浮かんでは消える。
頭と腰を抱きしめていた手が離れる。ほっとしたのも束の間、ぐっと顔が近付く。
薄い唇が重なる。刹那止まった呼吸にルキアは大きく目を見開く。
そして聞く。愛していていると。

「僕がはっきり言わなかったから、君はあんな奴と浮気したんだね。ごめんね。もう照れ臭いなんて思わない。はっきり言うよ」

吉良は再びルキアに愛を告げる。
…ルキアは鳥肌が立っていることに気付いた。吐き気が止まらない。こみ上げる酸っぱいものを我慢しながら、ぎゅっと繋いだ手に力を込める。
爪が食い込んで痛いだろうと。しかし吉良の、大人の掌にはそれほどダメージは与えられなかった。彼は恍惚とした笑みを浮かべて言う。

「分かった。君があんな奴と浮気したのは、僕の気を引きたかったからだ。今こんなふうに手を強く握るのもそう。寂しかったんだね。ごめんよ」

……こいつ、本物だ。
ルキアは必死に腰を引いたが吉良は迫って来る。やがて、

「もう寂しくないよ。いっぱい愛してあげるから」

黒髪がふわりと舞う。見上げる天井と金髪。ひっ、とルキアは悲鳴を漏らす。吉良は、垂れ下がる照明の紐を引く。
カチリ。蛍光灯が一つ小さくなる。

「声を出しても大丈夫だよ。周りの人、夜中にならないと帰ってこないから。…君の声なんて、誰にも聞かせてやらないよ。僕だけが聞いていいんだ」

カチリ。一番小さな電球が点る。一気に部屋が暗くなり、ルキアはぼろぼろと涙を零す。我慢していた恐怖心がとうとう溢れ出た。
けれどその涙を吉良はちゅっと吸い取る。ああ、少し塩辛いね。でも美味しいよ。
カチッ。完全に真っ暗になった室内で、吉良の優しい声が響いた。
シュッとスカーフを外す音がいやに大きく聞こえる。プチプチと丁寧にホックを外して、セーラー服の前を開ける。
――ああ、きれいだ。
それは春、駅で初めてルキアを見かけた時に抱いた感情と同じものだ。
本社から地方転勤を命じられて陰鬱な気分だった吉良は、駅で偶然ルキアを見かけた。初めはその可愛らしさに惹かれたのだ。
けれど彼女について色々調べるうちに、いつの間にか本当に好きになっていた。
毎朝写真の彼女に挨拶をして、一緒に朝食を食べて、いってきますと言って。
お昼だって彼女が好きだといったものをお弁当にして食べて、彼女の帰宅時間に間に合うように仕事を頑張って。
帰宅したらただいまと語りかけて、一緒に夕御飯を食べて、愚痴を聞いてもらって、おやすみと言って。
そういえば、愛してるなんて一度も言ったことがなかった。
カーテンを引かず、外からの明かりでルキアの肢体が輝く。
白の、僅かにフリルの付いたキャミソール。そのフリルを突き上げる薄い胸。吉良はそっと手を伸ばして、包み込んだ。
大きな心音。ああきっと緊張しているんだ。吉良は微笑んでまた唇を重ねる。微かに甘いのはリップの味か。

「ルキアちゃん、甘い。その味は僕だけのものだからね」
「ぃや…っ」
「もっとちょうだい……」

膝を脚の間に割り入れて閉じさせないようにし、吉良はルキアに覆い被さった。
頑なに閉じる唇をこじ開けて、歯をなぞる。吉良は胸から鎖骨にかけて撫でまわしながら思う。どうしてこんなに何もかも綺麗なんだろう。僕がレントゲン技師なら今すぐにでも撮るのに、と。
舌を差し込んで求めると、暫くして、ゆっくりと小さな舌に触れる。
ぴちゃぴちゃと水音が二人の唇から洩れる。唾液の一滴だって誰にも渡さない。肉を目の前にした獣のように溢れる己の唾液を呑み込みながら、ルキアのそれも吸い込んだその時、

「…っん」

小さな喘ぎ。聞き漏らすはずがない。吉良は滾る。ルキアの手がスーツを掴むのも、脚をばたつかせるのも、嬉しいから。
甘いキスに浸りながら、吉良はキャミソールの中に手を滑りこませる。ちらりとずらすと、下着も同じく白だ。ルキアは何を着ても似合うけれど、白が一番きれいだ。
幸いなことに、下着は前ホック式だった。体育など着替える時はまだ写真に収めていなかったため、分からなかった。
ホックを外して、柔らかな胸に触れる。かさついた指先が優しく沈み込む。初めて触れる柔らかさに吉良は何故か、心の落ち着きを得る。
けれどルキアは反対に震えていた。それは吉良が飾りに指を伸ばすと、更に強くなった。

「寒い?」
「っ、ぅ…」
「大丈夫。すぐに温かくなるよ」

言うと、吉良はネクタイを取った。そしてあっという間にルキアの手首を縛ってしまう。

「っ!?」
「嫌がるだろうからこうしておくよ。ちょっとだけ我慢してね」
「なにを…っ…!」

ルキアがもがいたが、吉良はその脚を取った。スカートを少し捲ると白い太ももが見える。ずっと眺めるだけだった脚が今、目の前に無防備に投げ出されている。
思わず吉良は太ももにかぶりついた。芳しい香り。脳髄が痺れるほどに。
欲望のままに、吉良はスカートの中へ侵入していく。
鬱血痕を辿れば、ああやっと見つけた。秘密の花園。
下着越しに吉良は鼻先を突っ込む。少し湿っている。今度は舐めてみる。胸同様に柔らかい。味はもちろん、美味しい。
舌舐めずりをしたその時、後頭部に衝撃を感じて顔を上げる。当たったのはルキアの膝小僧だった。
ルキアはうす暗い中でも分かるくらいに、頬を真赤にしていた。キスのしすぎで息切れも起こしている。そして目尻には涙を流した痕がある。
どうしたの、と問いかければ彼女は首を横に振る。どうして、と再び問うと更に激しく首を横に振る。
その反応を見て、吉良は静かに言う。

「漏らしても大丈夫だよ。君のなら全然汚くないし、全部飲んであげるから」

……等と、いかにも人の良さそうな笑みを浮かべて言う台詞ではない。だがルキアは勢いを削がれてしまい、

「あッ!」

下着越しに吸うと、何とも言えない味が口内に広がる。舌でいじると形をはっきりと表すのは肉芽だろうか。
吸う度に溢れる蜜。邪魔をしないように膝を押さえて堪能していると、ルキアの喘ぎが耳に心地よい。
控えめだった声が徐々に大きくなってゆく。やがて、爪先がぴんと張る。その瞬間、蜜が一気に溢れて下着を汚した。
どうやらルキアは己の愛撫に満足してくれたようだ。愛しく思いながら吉良は下着を脱がす。
男でもなるように、女も絶頂に達すると身動きが緩慢になるようだ。何の抵抗もなく下着はあっという間に脱がされ、ルキアは濡れた下半身を外気に晒す。

「痛いかもしれないから……力抜いてね」

優しく頭を撫で、そっと指を挿入する。途端にルキアの身体が跳ねた。手首の拘束を解こうと、吉良から逃れようと再び全身をくねらせる。

「いや! 痛い…っ痛い!」
「大丈夫だよ。少しずつ慣れていくから…」
「いやあぁっ…!」

粘着質な音を響かせて吉良はルキアの固い秘部を解してゆく。あの反応から、自分でも触ったことがなさそうだ。
そこに、僕が入る。初めて。吉良は背筋が震えた。

「今夜、僕たちは、一つになれる…本当は、結婚してからでも良かったけど…あんなことになったら、もう、仕方ないよ」
「いぃやぁっ! やだ! 抜いてぇっ」
「もう、他の男と仲良くしちゃ駄目だよ。僕以外の男と、会っちゃ駄目だよ。君は、僕の傍にいなくちゃ……」

吉良はずるっと指を引き抜いて舐める。ああ、幸せの味がするよ。
これは愛情表現だよ。再び大人しくなったルキアに向けて囁き、吉良は熱い下半身を取り出す。
ルキアと会えた、話せた時点で少し昂ぶっていた欲情が、今やはち切れんばかりに熱く猛っている。
先端の先走りにルキアの蜜を混ぜ、ふふっと笑う。こんなところじゃなく、もっと一つになれるところがあるのに……。

「僕、君を傷つけないようにずっと我慢してたんだよ。君にだって気分があるだろうから、ずっと待ってたんだよ。でも君は浮気した」

体を寄せ、吉良は猛る先端をぴたりとルキアの秘部に宛てる。滑って今にも入りそうだ。

「君の処女は僕がもらう。これから君は、僕だけしか受け入れちゃ駄目だよ?」
「いやっ…やめ――――あああああっ!」

押し入った熱は、狭い肉壁を荒々しく掻き分けてゆく。喉を嗄らそうとするかのようにルキアが痛みに叫ぶ。
放出に耐えながら、吉良は腰を据える。結合部から滴る鮮血と、ぴったりと包み込むそれはまさに処女の証だ。

「んッ……ルキアちゃんの中、すごく、気持ちいい」

呟いてもルキアは肩で呼吸をするだけだ。よしよしと頭を撫でると潤んだ瞳が窓の方へ向く。
それすらも、嫉妬に変わる。
吉良はぐっと腰を引いた。びくりと小柄な体が震える。

「っ、いた゛い…!」
「浮気は駄目って言ったでしょ? 僕だけを見ててよ……」

ベッドが大きく軋む。結合部からこぽこぽと二人の体液が溢れだす。

「あ゛あぁっ! いだい! いやあっ…!」
「浮気するからっ、だよ。僕だって、こんなことっ、したくないんだよっ…!」
「ごめんなさぃっ…ごめんなざいっ!」
「あんなふうに、さぁっ、他の男っ、家に上げるようなことっ、しちゃ、駄目だよ? こういうこと、していいの、僕、だけ、だからっ…」
「ごめんなさい…ッ」

ルキアは縛られたままの手を顔に掲げ、表情を隠している。しかしそれを吉良は許さなかった。
ぐいっと手を退けると口付けを落とす。
……僕のこと、見てて。
刹那の呟きにルキアはシーツにしがみつく。
やがて、ルキアは悦楽を含んだ、鼻にかかった喘ぎを漏らす。
ルキアちゃんのこんな姿を見られるのは僕だけ。クラスの男子もあの男も見られない。
そう思うと、胸が切なくなって。

「――ルキアちゃん、僕の、子供、産んで」
「っ…!?」
「じゃないと、また、浮気するでしょ……ッ!」

ルキアの中で吉良は脈打った。誰にも渡したくない。そんな思いから、吉良はルキアの中で放出することを選択した。
ルキアは激しく頭を振る。声にならない叫びを上げる。
しかし、もう遅い。
刹那的快感に吉良は深く息を吐いた。この充足感は素晴らしい。
それに対してルキアはぐったりと身動き一つしない。視線も落ち着かず、はくはくと口だけが酸素を求めている。
そうだ。約束しておかないといけない。吉良はルキアの小指と自分の小指を結ぶ。

「……いっぱいしようね。約束だよ? それで、結婚しよう。ね?」

ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。……ゆびきった!

玩具を与えられた、子供のように弾んだ声だった。